陸域人間圏課題
人間圏への影響が顕在化する陸域環境変化に関する広域的可視化とその活用

北極陸域では、雪氷圏の縮小や永久凍土の融解が急速に進み、地形、生態系、水環境などへの広範な影響が近年一層顕著になりつつあります。陸域資源に依存する人間社会が持続可能な発展を遂げるには、それらの変化を正確に把握し、対策を講じることが不可欠であり、広域的で理解しやすい情報提供が求められます。本研究課題は、北極陸域の環境変化が人間社会に与える影響を包括的に理解し、対策立案に資する情報を提供することを目指します。特に、科学的知見を融合した分かりやすい可視化情報として社会に提供し、その実利用の普及を図る、分野横断的かつ超学際的なアプローチを図ります。
本研究課題は4つのサブ課題で構成されます。
サブ課題1「凍土とインフラ」では、永久凍土の変化が社会生活基盤に与える影響を評価し、北極域の持続可能な社会構築に貢献します。サブ課題2「環境変動検出」では、リモートセンシングデータとデータサイエンス技術で凍土融解や地表面の変化、人間活動による広域環境変動を可視化します。サブ課題3「海水準予測」では、グリーンランド・アラスカ北岸の現地調査とシミュレーションから、地域的な海水準の未来予測を提供し、沿岸域の社会政策策定に貢献します。サブ課題4「地理情報可視化」では、自然環境と人間活動の関係性を地理情報として整理し、現地住民との協働を通じて、地理情報を活用した環境適応行動の変容を促します。
本研究課題は、他課題との連携と研究基盤の活用により、研究の統合性と社会貢献性を高めます。例えば、気象災害課題とは災害現象の人間環境への影響評価と発生要因解明を統合し、人間環境への理解を深めます。先住民課題とは、流域の環境変化可視化と社会データ分析を共有・統合し、現地ステークホルダーとの協働を通じて人間環境への影響とその対応の理解を深めます。また、自然・社会現象の統合的理解のため、他の課題とも連携を進めます。研究基盤は、アラスカでの現地調査や協働研究でアラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター(IARC)を、干渉合成開口レーダー(InSAR)解析手法検証のためにポーカーフラットリサーチレンジ観測サイト(PFRR)の衛星・現地観測データを活用します。宇宙航空研究開発機構(JAXA)衛星データは永久凍土融解に伴う地形沈降現象の検出などに、北極域シミュレーションシステムは過去・将来の気候変動データ解析に利用します。北極域データシステムは、リモートセンシングデータや社会統計データを統合した地理情報化に利用し、現地住民コミュニティへの情報還元を考慮し、一般向け公開方法も検討します。
サブ課題担当者
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斉藤 和之(海洋研究開発機構)
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伊勢 武史(京都大学)
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菅沼 悠介(国立極地研究所)
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飯島 慈裕(東京都立大学)
海外連携機関
アラスカ大学フェアバンクス校国際北極圏研究センター(IARC)/モンゴル科学アカデミー地理・地生態学研究所/ロシア科学アカデミーシベリア支部 永久凍土研究所