プロジェクト概要

北極域で起きている急激な変化を理解し、人々の役に立つ研究成果を創出します

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構及び国立大学法人北海道大学は、文部科学省が公募を実施した環境技術等研究開発推進事業費補助金事業の北極域研究強化プロジェクト(ArCS III:Arctic Challenge for Sustainability III、プロジェクトディレクター:羽角 博康/国立極地研究所・客員教授)に共同で申請しておりましたが、2025年3月10日に採択通知を受け、2025年4月1日より国内最大規模の北極域研究プロジェクトを開始しました。本事業の実施期間は2029年度末までです。

北極域は、地球温暖化の影響が最も顕著に現れている地域であり、北極域の自然環境の急激な変化は、中緯度を含む地球全体の環境や生態系に大きな影響を与えています。北極域の持続可能性に関する社会的課題の解決に貢献する分野横断型研究の発展や、北極域環境の実態把握(観測空白域の解消)とそれに基づく予測信頼性の向上は喫緊の課題です。

本プロジェクトは、2011年度開始のGRENE北極気候変動研究事業からArCS、ArCS IIと続いてきた日本の北極域研究プロジェクトをさらに発展させたもので、3の戦略目標をもとにした10の研究課題とそれを支える7の研究基盤で構成されています。研究基盤には、観測や解析の結果をアーカイブし公開するための北極域データシステム(ADS)や、2026年に就航する北極域研究船「みらいⅡ」、JAXAの運用する地球観測衛星などが含まれます。

プロジェクトゴールと戦略目標

ArCS IIIでは、
「北極域の環境と社会の変化に起因する社会的課題の解決に向けた総合知の創出」
をプロジェクトゴールとして掲げています。
ここでいう「総合知」とは、自然科学と人文・社会科学など異なる分野の知見を組み合わせ、複雑な課題に多面的にアプローチする知の在り方を意味しています。単なる分野横断にとどまらず、研究者間や地域社会との連携を通じて、実社会の課題解決につながる知を創出することを目指しています。

このゴールの達成に向けて、ArCS IIIでは以下の3つの戦略目標を設定しています:

  1. 分野横断的観測と先進的シミュレーションに基づく北極域環境変化の情報創出
    多様な科学分野の連携による高精度な観測・解析と数値モデルによって、北極環境の変化を理解・予測する情報を生み出します。
  2. 北極域環境変化に適応する社会構築への貢献
    環境変化の影響を受ける人々や社会がその変化に適応できるよう、政策立案や持続可能な社会のあり方に資する知見を提供します。
  3. 先住民文化と北極域ガバナンスの創発と変容過程の理解
    北極に暮らす人々の文化や社会システムに焦点をあて、急速な変化のなかで進む文化的・制度的変容を理解し、共生の道を探ります。

このように、北極の急激な環境変化が我が国を含む人間社会に与える影響を評価し、自然科学・人文科学・社会科学にまたがる分野横断的なアプローチにより、北極における社会課題の解決に役立つような研究成果を創出します。国際的なルール形成のための法政策的な対応の基礎となる科学的知見を国内外のステークホルダーに提供するなど、異分野融合と実践的連携による総合的な知の創出を通じて、北極域と地球全体の持続可能な未来に貢献することを目指しています。

プロジェクト運営体制

ArCS IIIでは、国立極地研究所を代表機関、海洋研究開発機構と北海道大学を副代表機関とする協力体制のもと、プロジェクト運営会議、外部有識者委員会、国際助言委員会、事務局を設置してプロジェクトを運営します。

10の研究課題はそれぞれが3つの戦略目標に貢献しますが、各目標を担当する3名の戦略目標統括役を置き、各目標と関係の深い研究課題を中心に、各課題の研究成果がプロジェクトゴールにつながるようコーディネートします。

 

代表機関

情報・システム研究機構 国立極地研究所

副代表機関

国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立大学法人北海道大学

プロジェクトディレクター(PD)

サブプロジェクトディレクター(SPD)

戦略目標統括役

渡邉 英嗣(海洋研究開発機構)/飯島 慈裕(東京都立大学)/赤嶺 淳(一橋大学)

プロジェクト運営会議

プロジェクトの円滑な推進のため、運営に係る事項を協議し、決定します。
プロジェクトディレクター(PD)、サブプロジェクトディレクター(SPD)、プロジェクトディレクター補佐(PD補佐)、戦略目標統括役3名で構成されます。

外部有識者委員会委員
氏名 所属
呉人 惠 北海道立北方民族博物館
野沢 徹 岡山大学
原田 尚美(委員長) 東京大学
三ツ橋 知沙 日本科学未来館
山内 豊 ジャパンマリンユナイテッド株式会社
山口 悟 防災科学技術研究所
敬称略、50音順(2025年4月現在)

国際助言委員会(IAB: International Advisory Board)

国際的な北極研究プロジェクトの代表者や北極研究を行う研究機関の長など、世界的な北極研究の第一人者を委員として迎え、プロジェクトの計画や成果等に関し、国際的な観点から助言いただきます。

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