活動報告

ディスコ島でのホッキョククジラ調査

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ディスコ島でのホッキョククジラ調査

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執筆者:小川 萌日香(国立極地研究所)


年間を通して北極に生息する数少ないヒゲクジラの一種、ホッキョククジラ。体長が最大で18メートル、体重100トンにもなる彼らの水中での行動を観察するために、日本、デンマーク、カナダの研究者からなるチームは今年5月、グリーンランドでホッキョククジラのバイオロギング調査を行いました(写真1)。

写真1:研究チームと回収したタグ

調査地は、中西部に浮かぶグリーンランド最大の島、ディスコ島です。ホッキョククジラは春の訪れとともにこの海域に採餌のためにやってきて、沿岸のケケッタッスァック(Qeqertarsuaq)は村旗のシンボルにしているほどです。

今回の調査では、ドローンを使ってホッキョククジラにデータロガーと呼ばれるタグを取り付けることを試みました。使用するロガーは、個体を識別しながら水中の音や水温、クジラの潜水深度や遊泳速度などを高解像度で記録できるため、彼らの詳細な遊泳行動を解明することが期待されます。

同じ鯨類であるイッカクの調査に慣れてきたこともあるのでしょう。まず、驚かされたのがホッキョククジラの多さです! 港を出港してすぐに発見でき、時には滞在している宿からも目にすることができたほどです(写真2)。

写真2:船とクジラとドローン

ホッキョククジラは、約20分間エサを食べるために潜水したあと、呼吸のために数分間水面に浮上します。タグは、そのタイミングを狙ってドローンから装着します。従来の方法は、船でクジラに接近し、長いポールを使って行うことが主流でした。しかし、現在ではドローンを使う方法に移行しつつあります。より効率的に、簡単に、そして非侵襲的にクジラにタグを装着することが可能となるからです。今回は、10日間で約30個体にタグを装着し、400時間に及ぶデータを収集できました。タグの装着成功率もほぼ100%を達成しました(写真3)。

写真3:ドローンからタグを落下させて装着する様子

ホッキョククジラは約200年生きると言われています。大きな体で力強く呼吸をするホッキョククジラを目の前にすると、彼らは今までどのような海を見てきたのか、何を経験してきたかに思いを馳せるとともに、これからも彼らにとって豊かな北極の海が続くことを願う気持ちになりました。

一度は乱獲によって、グリーンランドからほとんど姿を消したホッキョククジラ。1980年代には、その個体密度は1km2あたり0.0013頭にまで減少してしました(Reeves and Heide-Jørgensen 1996)。その後、狩猟枠に制限が設けられ、捕獲数は年間数頭のみとなり、個体数は大きく回復しました。実際、調査中も、1日に何十頭ものホッキョククジラを観察できました。自然の回復力にはいつも驚かされると同時に、私たちの行動が問われていると実感します。

貴重なデータが取れた春のフィールドワークでした!解析が楽しみです。


参考文献
Reeves, R. R., & Heide-Jørgensen, M. P. (1996). Recent status of bowhead whales, Balaena mysticetus, in the wintering grounds off West Greenland. Polar Research, 15(2), 115–125.


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