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北極海の海氷上における観測 ~アイスコアの採取・測定・撮影~
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執筆者:村岡 翔太郎(北見工業大学大学院 工業研究科 博士前期課程2年)
私は北極海で実施された国際共同プロジェクト「Joint Ocean Ice Study(以下、JOIS)2025」に参加しました。JOIS2025では、カナダ沿岸警備隊の砕氷船「Louis S. St-Laurent(ルイ・S・サンローラン)」により、からにかけて観測が行われました。今回は、JOIS2025で実施された氷上観測についてご紹介します。
氷上観測を行う前には、まず氷上に降りるまでに多くの苦労がありました。衛星画像とアイスレーダーを用いて、降り立つのに適した平坦な氷盤を探します。氷盤に接岸する際は、船速を落とし、氷を割らないように慎重に停船します。しかし、目標としていた氷盤に近づいた瞬間にクラック(亀裂)が入ってしまうことが多く、なかなか適切な場所を見つけることができませんでした。
ようやく降りられそうな場所を見つけたと思ったら、今度はその氷盤にホッキョクグマの親子が現れることもありました。ホッキョクグマの親子を見られて嬉しい気持ちと、危険のため氷上に降りられない残念な気持ちが半々で、なんとももどかしい思いでした(笑)。そんな中でも、今回は氷上に2回降りる機会がありました。(写真1)
氷上観測では、氷上観測所地点でのブイ設置に加えて、氷厚や積雪の測定、アイスコアの採取など、さまざまな観測が行われます。私はその中で、アイスコアの採取・測定・撮影を担当しました。
アイスコアは、長さ1m、直径4インチのコアラーに新型の電動オーガーヘッドを取り付けて採取しました。採取後はすぐに、コア上端から5cm地点に手動ドリルで穴をあけ、その後10cm間隔で温度を測定しました。温度測定の後、コアを5cmごとに分割して密度を測定し、袋詰めした後に船内で融解させ、塩分測定を行いました。塩分は携帯型塩分計を用いて測定しました。
また、今年は新たな試みとして、iPad ProのLiDAR機能を活用し、アイスコアの三次元形状および体積を記録しました。これにより、より正確な密度の算定を目指しました。(写真2)

写真2:採取したアイスコア (176.0 cm)
今回のJOIS2025への参加は、私にとって非常に貴重な経験となりました。特に現地でデータを取得することの大変さを実感し、日ごろ研究で使用している観測データの重要性を改めて感じました。この経験を糧に、今後の研究にも一層励んでいきたいと思います。