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気候変動に対する北極圏漁業のレジリエンスに関する調査報告
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執筆者:金澤 海斗(岩手大学大学院 連合農学研究科 博士課程1年)
からにかけて、私はノルウェー・トロムソおよびアイスランド・アークレイリに滞在し、気候変動に対する北極圏漁業のレジリエンスについて調査および議論を行いました。
近年、気候変動とそれに伴う大規模自然災害は世界の漁業に深刻な影響を及ぼしています。特に北極圏は、気候変動による環境変化が他地域よりも急速かつ極端に現れる地域であり、北極海の漁業への影響が強く懸念されています。訪問先であるノルウェーおよびアイスランドにおいて、漁業は主要産業の一つであり、気候変動に対する回復力すなわちレジリエンスの構築は、沿岸の社会経済を支える上で喫緊の課題となっています。
ノルウェー・トロムソではノルウェー北極大学、アイスランド・アークレイリではアークレイリ大学を拠点とし、漁業に関するデータ分析および現地の研究者・学生を交えたセミナーを実施しました。調査では、主要魚種の資源量と漁獲量・漁獲高の長期的変化をデータに基づいて分析し、これらの変化の要因について文献調査と現地の研究者との議論を通じて考察しました。
分析の結果、北極圏の漁業は主要漁獲魚種の構成が大きく変動してきた歴史を辿っており、現在もその変化の過程にあることが確認されました。注目すべきは、こうした変動の中でも漁業が存続・発展してきた点です。この背景には、日本とは異なる漁業管理制度の発展が重要な役割を果たしていると考えられます。セミナーでは、日本の漁業を事例とした私自身の研究を共有し、漁業レジリエンスのメカニズムおよび北極圏と日本の漁業管理の相違点を中心に議論を行いました。現地の研究者との議論を通じて、これまでになかった分析視点や研究手法に関する助言を得ることができ、今後の研究の深化につながる有意義な機会となりました。
今後は、今回収集したデータのより詳細な分析を進め、漁業レジリエンスのメカニズム解明を目指します。特に、日本の漁業との比較分析を通じて、レジリエンスに寄与する普遍的要因と地域固有の要因を特定することで、北極圏に限らず世界の漁業におけるレジリエンス強化に資する理論の構築へと発展させたいと考えています。また、今回の調査で築いた現地研究者との人的ネットワークを活用し、継続的な研究交流を行うことで、北極圏漁業研究の発展および漁業の持続可能な発展に寄与してまいります。