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アラスカ先住民コミュニティにおける、参加型アプローチを用いた地域介入プログラムの開発に関するインタビュー調査

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アラスカ先住民コミュニティにおける、参加型アプローチを用いた地域介入プログラムの開発に関するインタビュー調査

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執筆者:吉田 早希(東北大学大学院 医学系研究科 博士前期課程2年)

にかけて、アメリカ合衆国アラスカ州のフェアバンクス・アンカレッジ・ノームの3都市を訪問し、地域介入プログラムへのコミュニティ参加がどのように行われているのか、インタビュー調査を実施しました。

インタビュー中の様子 インタビュー中の様子

近年、健康格差は国内外で重要な課題として注目されており、経済状況や住環境などの健康の社会的決定要因(Social determinants of health)の影響を受けて生じるとされています。米国アラスカ州では、先住民と非先住民との間に大きな健康格差が存在し、その背景には植民地支配による文化・土地の喪失や歴史的トラウマなど複合的な要因があります。こうした課題に対し、先住民の文化や価値観に根ざした参加型アプローチによる対応が求められ、住民の参加が積極的に実施されています。しかし、これらの取り組みの具体的な内容について体系的に整理した研究はありません。そこで本調査では、アラスカ州先住民コミュニティにおける参加型プログラムの実践者を対象としたインタビュー調査を実施しました。

滞在中は、9名のプログラム実践者に聞き取りを行いました。インタビューからは、地域の文化や価値観、知恵を尊重する誠実な姿勢が、地域との信頼構築に繋がり、プログラムや研究の受容性を高めることが明らかとなりました。また、地域のキーパーソンや訪問のタイミングを見極め、何度も住民と語り合い、時には食事を囲みながら、地域と共に創り上げていくことが、コミュニティに自立性と持続的な発展をもたらすことなどが示されました。

インタビューに加えて、大学や医療機関を訪問し、地域保健・地域参加・先住民文化に関連する情報収集を行いました。さらに、ノームではヒアリングにご協力いただいた先住民の方のフィッシュキャンプにも訪問し、その生活と雄大な自然、へき地の現実も実感しました。

今後は、収集したデータの分析を進め、地域に根ざした参加型共創の推進に資する実践的な枠組みを整理し、北極圏における学際的研究や地域実践の発展に貢献することを目指します。

ArCS III若手人材海外派遣プログラムのご援助をいただき、貴重な経験と多くの学び、そして重要な知見を得ることができました。本派遣でご支援を賜りました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。


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