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カナダ、バンクーバー島でのフィールド調査報告

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カナダ、バンクーバー島でのフィールド調査報告

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執筆者:立川 陽仁(三重大学)、吉村 真衣(名古屋大学)


カナダの太平洋沿岸に暮らす先住民族は、かつてサケの商業漁業で成功を収めてきました。しかし近年は、サケが減ったため、漁業の存続がむずかしくなっていると言われています。今回の調査は、こうした状況におかれている先住民の現状把握が目的です。

最初に実施したのは、クワクワカワクゥという先住民漁師がおこなうサケ漁の参与観察でした。今回の漁は、立川にとっては2006年夏のベニザケ漁以来、吉村にとっては初の参加となります。今回の漁はテスト・フィッシングといって、カナダ政府がデータ収集のためにベテラン漁師に依頼して行う漁です。私たちの友人の先住民漁師がテスト・フィッシングを依頼され、それに同行させてもらいました(写真1、2)。

漁が実施されたのはからまでの4日間。場所は太平洋に浮かぶバンクーバー島北東部の町、ポート・マクニールの港から東に少しいったところにある「ダブル・ベイ」と呼ばれる海域です。今回の調査では、サケの減少に伴い漁の方法にいくらかの変化がみられるかを確認したかったのですが、大きな変化はみられませんでした。ただ、過去、10月にみることがほぼあり得なかったニジマス(steelhead)が捕れたり、トドが増えていたりなど、いくらかの変化が観察されました。

漁が終わると、われわれはその先住民漁師宅に居候しながら、日々の生活を観察しました。その傍ら、クインサムのサケの孵化場を訪問したり(写真3、4)、キャンベル・リバーの先住民バンドが試験的に開始した海藻の養殖場を視察したりしました。先住民バンドが養殖場の経営に乗り出す例はけっして珍しくなくなってきましたが、海藻養殖は珍しいため、今回どうしても視察しておきたかったものです。

、キャンベル・リバー市の港で同バンドのリソース・コーディネーターであるエリン・ラザムさんとともに養殖場のあるブレント島までいき、この島の海藻の養殖場を視察させてもらいました(写真5、6)。この養殖場は、かつてこの場所に存在したセルマック(Celmaq)社のサケの養殖場跡地をほぼそのまま利用したものとなっています。セルマック社のサケの養殖場は半ば強制的に州政府に撤退させられたようなものなので、現在その跡地を占めているキャンベル・リバー・バンドの海藻養殖場とは反目していると思っていたのですが(そういうニュースも事前に確認していました)、興味深いことに、現在セルマック社は同バンドに対して養殖の技術支援を行っているそうです。


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