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ドア

「みらい」船内の研究区画面積は約500平方メートル、そこに30名前後の研究者が、日々仕事をしている。人口密度にして、1平方メートル当たり0.06人、日本の人口密度の180倍くらいの密度で人が生息している計算だ。だから、人に会わないことはほぼなく、1人になる時間はないに等しい。
しかし、夜中の研究試料分析では、船底に近い作業室で1人になることもある。そこで、世にも奇妙な出来事が起こった。閉めたはずのドアが、急にバタンと開いたかと思うと、誰かのささやく声が聞こえた。船内はエンジンや発電機の大きな音がする。
何を言っているのかは聞き取れない。北極の海氷を触ったような寒気が背中を襲う。冷や汗が垂れた。こんな出来事を共有してしまっていいのか?
こんな事を書いていると、後ろに奇妙な影を感じる。振り返れば、見慣れた2人の優しい笑顔。ブログ執筆に感謝する同僚といつもお菓子を分けてくれる同僚だ。やはり船内で1人になるのは難しいらしい…
注釈:日本の人口密度は、2025年時点で約338人/km² = 0.000338人/m² のため、0.06/0.000338 = 177倍となる。