活動報告

トウゾクカモメが盗賊にならない時

公開日

トウゾクカモメが盗賊にならない時

執筆者:金 潤秀(北海道大学 大学院水産科学院 博士1年)


こんにちは。海鳥目視チームの金です。

毎日海を眺めていると、海の上を飛んでいる海鳥だけでなく、餌を食べる海鳥の様子を観察することもあります。海鳥は、魚やイカなどの海洋生物を食べ、餌の種類や餌の捕り方は鳥によってさまざまです。海に潜って魚を捕まえる鳥もいれば(写真1)、海面に浮かぶ死んだクジラなどを食べる鳥もいます(写真2)。

その中でも、ユニークな餌のとり方をするのがトウゾクカモメです。その名前のとおり、他の海鳥が苦労して捕まえた餌を奪い取る行動でよく知られています。そのため、海上では周囲を見渡し、餌をとっている鳥を見つけると一気に追いかけて餌を奪います(写真3)。

写真3:ハシボソミズナギドリ(左)の餌を狙うトウゾクカモメ(右)(写真提供:吉松幸生)

ところが、寄港地だったアラスカのノームで、思いがけない光景に出会いました。ノームで観察したシロハラトウゾクカモメが、他の鳥から餌を奪うのではなく、自分でネズミを捕まえて丸のみしていたのです(写真4)。「盗賊」なのに、盗みをせず、自分で狩りをしている姿はとても意外で、印象に残っています。

a, b:陸上の獲物を探しているシロハラトウゾクカモメ、c: ネズミ(赤い矢印)を飲み込んでいるシロハラトウゾクカモメ(ノームで撮影)

後で調べてみると、その理由が分かりました。シロハラトウゾクカモメは、卵を産んで雛を育てる繁殖期に限って、普段の海での生活から陸上での生活へと切り替え、レミング(ネズミ類)などの小型哺乳類を食べるそうです。多くの海鳥は、繁殖期でも海と陸を行き来しながら海で餌を捕って暮らします。しかしシロハラトウゾクカモメは、季節に応じて生活の場だけでなく、利用する餌や餌のとり方まで大きく変える海鳥なのです。

今回の航海では、海上での観察に加え、陸上(寄港地)での観察を通じて、これまで知らなかった海鳥の一面に触れることができました。そこで得た経験や出会いは、これからの私の人生にとって、大きな財産になると感じています。


北極海からのメッセージ2026 一覧 おしょろ丸特集ページに戻る

Share