The 2026 Arctic Cruise of the training ship “Oshoro-maru” (in Japanese)
北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」は、からまでの期間、2023年以来の3年振りとなる北極航海を実施します。本航海は、ArCS III の支援を受けて実施され、北極の海洋環境・生態系研究の実施を通じ、北極域の諸問題の解決や知識の普及に関わる人材の育成を目指します。
2026年度「おしょろ丸」北極航海概要
北極海の海氷はこの数十年間にわたって大きく減少しており、今後さらに減少することが予測されています。また、北極域は世界平均に比べ顕著に温暖化しています。これは北極温暖化増幅と呼ばれ、今後も他地域より急激に温暖化が進行すると予測されています。こうした海氷の減少や海水温度の上昇は、プランクトン等の低次生態系から海棲哺乳類等の高次生態系を変化させ、生物多様性に影響を与えています。
洋上のキャンパスである「おしょろ丸」は、研究と教育の両面で日本の北極研究に貢献してきました。例えば、2017年と2018年に実施したベーリング海北部からチュクチ海南部海域の観測から、海氷が早く融解すると植物プランクトンブルームの時期が遅くなり、魚類の餌として有用な大型の動物プランクトンが減少し、魚類の餌環境が悪化することが明らかになりました。2023年には、全国の学部生を対象とした北極域の公開実習を初めて実施しました。公開実習とは、全国の大学生を対象に、練習船に乗船して海洋観測等を学ぶプログラムです。海洋の物理環境から生態系までの自然科学分野の調査を体験するだけでなく、北極域の政治・文化の専門家から講義を受けてグループワークを行うことで社会科学の観点からも北極域の諸問題に関する理解を深めました。
本航海では、ベーリング海北部から北極海の縁辺海であるチュクチ海を対象海域として、海洋の熱・物質循環、植物プランクトンから海棲哺乳類等の高次生物までの海洋生態系を、海洋観測、サンプル採集、培養実験、目視観測等によって明らかにする計画です。これらの観測により、海洋環境の変化が海洋生態系に与える影響の総合的な理解を目指します。
航海には、多様なバックグラウンドを持った学生が乗船します。北海道大学水産学部生、同大学大学院水産科学院生の他、京都大学や金沢大学の大学院生が観測及びデータ収集を目的として乗船します。航海の後半では、ArCS III人材育成の一環として、2023年度に引き続き2回目の実施となる公開実習を行います。今回は北海道から沖縄までの国立・私立大学から文系学部を含めて公募で選ばれた8名の学部学生が参加します。初めての試みとして、洋上だけではなく、ノームにおける住民とのコミュニティミーティングの実施も予定しています。本航海では北海道大学の教員だけでなく、ArCS III代表機関である国立極地研究所、副代表機関である海洋研究開発機構の教員・研究員も教育に参画することも新しい点です。また、北海道大学上廣海洋学分野とハワイ大学上廣海洋学振興センターの交流の一環として、ハワイ大学の学部生も乗船します。さらに、北海道大学水産学部と学術交流協定を締結している大阪市の水族館「海遊館」の飼育員も乗船し、生物採集を行うほか、実習実施に協力します。これらの取り組みにより、将来北極研究に携わる次世代の人材を育成するとともに、北極研究の裾野を広げます。
航行船
航海期間
〜までの42日間
調査海域
北太平洋、ベーリング海北部、チュクチ海東部
おしょろ丸北極航海の予定航路

「おしょろ丸」北極航海2026の予定航路(●は停船観測点を、○は寄港地を表す)
調査研究実施内容
- ベーリング海〜北極海の物質輸送・生態系等の海洋環境の理解に資する観測研究(生物多様性課題・温室効果ガス課題)
- ベーリング海〜北極海の温室効果ガスや化学物質の動態・大気との交換過程の理解に資する観測研究(生物多様性課題・温室効果ガス課題)
- 海面、水柱、海底における動・植物プランクトンの分布と生態に関する研究(生物多様性課題)
- 極域における海洋環境変化に応じた海鳥の分布変化に関する研究(沿岸コミュニティ課題・生物多様性課題)
- 成魚と仔稚魚の採集を通じた魚類群集構造変化のモニタリング(生物多様性課題)
- マイクロプラスチックに吸着した残留性有機汚染物質の定量および付着微生物叢の解明(生物多様性課題)
- 北極域に生息する海棲哺乳類の分布と環境要因に関する研究(沿岸コミュニティ課題・生物多様性課題)
- 環境DNAを用いた、温暖化に伴う北極圏魚類の分布・多様性の変化に関する研究(生物多様性課題)
北極海からのメッセージ2026(準備中)
2026年度北極航海実施中、「おしょろ丸」乗船者からのメッセージを掲載します。