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北極科学サミット週間(ASSW)2026への参加報告
からまで、世界の北極研究者や関連組織が北極の課題や研究について議論する「北極科学サミット週間(Arctic Science Summit Week: ASSW)2026」が、デンマークのオーフスで開催されました。日本からは多くの研究者や研究機関職員などが参加し、発表や聴講、交流を通して精力的に活動しました。その様子をお伝えします。
ASSW2026で得た知見と次世代への挑戦
投稿日:
執筆者:吉田 淳(国立極地研究所)
ArCS IIIに関わるようになり、北極に関する様々な国際的な組織や活動を耳にするようになりました。一方で、その活動内容は多岐にわたり、様々な略語が飛び交うため、全体像を掴みづらく感じていたのが本音でした。ASSW2026への参加は、これらを包括的に理解するための貴重な機会となりました。
初日には、デンマーク様式の圧巻の講堂で行われたICARP IV(第4回国際北極研究計画会議)の最終報告セッションに参加しました。ICARPは、北極研究の現状を総括し、今後約10年間の研究優先課題を整理して国際共同研究を推進する重要なプロセスです。優先課題の決定に何年もの時間と多くの研究者のインプットを要することは、北極をとりまく課題の複雑さを如実に表していました。私の専門である大気科学に関連する作業チーム「The role of the Arctic in the Global System」では、高度別の観測や冬季の観測の必要性が強調されており、技術的ハードルの高さを認識しつつも正面から取り組むべき課題だと実感しました。
大気作業部会のセッションでは、2025年の活動報告や新メンバー・フェローの紹介に加え、IPY-5(第5回国際極年)に向けた議論も行われました。議論の中で特に記憶に残っているのは、前回のIPY-4を振り返り、多大な労力をかけて構築された観測ネットワークやデータベースの多くが、プロジェクトの終了とともに途絶えてしまったことへの懸念です。活動を一過性で終わらせるのではなく、「本当に不可欠なプロジェクトを見極め、長期的に利用され続ける有用なインフラとして残していくべきだ」という意見は、私自身の研究活動やArCS IIIにおいても意識すべき重要な視点だと感じました。
SAS2(北極海国際同時航海観測の後継プロジェクト)のセッションでは、西野茂人さん(国立極地研究所)や八田真理子さん(JAMSTEC)をはじめとする日本メンバーがリードする姿から、国際プロジェクトを牽引するために必要な資質の一端を学ぶことができました。なお、私は会場で出会った若手研究者の経歴を確認するようにしており、中には国際的な活動と卓越した研究業績を両立する人もおり、大いに刺激を受けました。
余談ですが、ASSW2026に参加する際、以前グリーンランド航空機観測キャンペーン(PAMARCMiP 2018)でノード基地を訪れた際に購入したロゴ付きの上着を着ていきました。すると、そのロゴを見たノード基地にゆかりのある方々から何度も声をかけていただいたという、嬉しい出来事がありました。決して安い買い物ではありませんでしたが、国際交流のきっかけとなり、購入した甲斐がありました。
今回実際にASSWに足を運んだことで、漠然としていた全体像をかなりクリアにすることができました。一方で、多くの活動を見聞きする中で、本質的には重複している部分もあるのではないかと感じたのも事実です。もしかすると、私の把握していない情報や独自の背景があるのかもしれません。今後ともASSWをはじめとするIASCの活動を注視しながら、北極科学の国際コミュニティにおいて自分がどのように関わっていくべきか、見極めていこうと思います。
来年のASSW2027は函館で開催され、私はLOC(現地組織委員会)の一員として運営に携わります。今回は運営目線でも観察し、会場・プログラム構成から食事まで、配慮すべき点の多さを実感しました。今回得た知見とネットワークを活かし、ArCS IIIの活動とASSW2027函館大会の成功に貢献していきます。
ASSW2026@オーフス報告
投稿日:
執筆者:波多 俊太郎(国立極地研究所)
からにかけて、デンマーク第二の都市オーフスで開催された北極科学サミット週間(ASSW)2026に参加した。
初日に行われた国際北極科学委員会(IASC)合同作業部会では、IASCの会長から挨拶があったのち、今年選ばれたIASCフェローが紹介され、2025年に実施された横断プロジェクトの概要・成果が紹介された。横断プロジェクトは、ワークショップや野外活動を含むコースの開催が目立った。どの分野の活動でも若手研究者(ECS)の参加者数についての報告が多く、雪氷学と海洋分科会の横断プロジェクトとして開催された「The 6th International PaleoArc conference」には、16の国から80名以上の参加者があり、さらに参加者の約半数がECSとのことで、多数の若手の参画に驚くばかりだった。
IASCの雪氷学分科会(CWG)会合では、全体として30名程度の参加者があった。日本からはIASCのCWG日本代表である北海道大学の箕輪昌紘さんに加え、JAMSTECの肥田さん、国立極地研究所の榎本浩之さん、末吉哲雄さん、波多が出席した。議長のKelly Hogan氏をはじめ、CWGを実質的に動かしているメンバーは大部分が女性であり、印象的であった。
会合ではCWGの2025年活動報告、各国からのアップデートが共有された。当日は2026年の横断プロジェクトの応募締め切り後であり、20件もの応募プロジェクトの紹介があった。また、合同部会で報告のあった2025年の横断プロジェクトについても報告された。そこでは、ASSW2026の直前にサロマ湖で行われた海氷に関するプログラム(CIce2Clouds)が注目を集めていた。200名もの応募者があったとのことで、そんなに大勢からどのように参加者を選定するのか、という質問が飛んだ。応募者のキャリアステージや応募書類から読み取れるモチベーション、およびその学生にとってどの程度有益なのか?という点が考慮された模様だった。今後何らかのプログラムに申請する際には、そういった点も踏まえると良いのだろう。
今年の6月にノルウェー・スバールバルへ行くこともあり、は「Svalbard session towards IPY5(第5回国際極年)」というセッションに参加した。ノルウェーでは、2032年から2033年にかけて実施されるIPY-5に向けた国内委員会が立ち上がったこと、そしてIPY-5に向けたニーオルスンでの研究活動方針について紹介された。これまでも長年研究が継続されている各分野(大気、氷河学、コングスフィヨルドシステム、陸域生態系等)での今後注目すべきトピックが挙げられていた。その後、第4回国際北極研究計画会議(ICARP IV)やEU-PolarNetなどの活動紹介があったが、やはりニーオルスンでの研究活動が、フラッグシップであるという印象を受けた。
ASSWは普段あまり参加することのないタイプの国際会議で、北極研究を進めるための各国の指針を共有して共通認識を構築しているのだと理解した。このような国際協力が北極域においては特に重要なのであろうと認識させられた会合だった。