活動報告

モンゴルにおける地下氷地形(ピンゴ、サーモカルスト )と湧水および地下貯蔵庫の現況

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モンゴルにおける地下氷地形(ピンゴ、サーモカルスト )と湧水および地下貯蔵庫の現況

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執筆者:石川 守(北海道大学)、斉藤 和之(JAMSTEC)


ユーラシア永久凍土帯の最南端に位置するモンゴルでは、永久凍土の存否に応じた様々な地表面状態が狭い範囲に混在しています。また、ここで遊牧を生業とする人々は永久凍土がもたらす様々な生態系サービスに大きく依存した生活を現在でも続けています。北部の定住化した集落においても、気候変化に伴う地温・土壌水分の上昇は生活基盤に影響を及ぼしています。本サブ課題(陸域人間圏課題)の研究目的の大きな一つは、永久凍土中に含まれる地下氷の動態や地温状況と、それが人々の生活に与える影響を理解し評価することです。

2025年の8月から9月にかけて、モンゴル中北部の永久凍土帯にてピンゴ・サーモカルスト・構造土といった地下氷の集積や衰退を反映する特異な地形や、自然湧水の現状に関わる現地調査を行いました。なお調査にはモンゴル科学アカデミー地理地生態学研究所の方々の大きなサポートを頂きました。

地形の調査ではダルハッド盆地やハンガイ山地など合計数十地点で、最新のUAV(無人航空機)システムを用いた空撮を行いました(写真1)。現在、得られた画像データから詳細な地形モデルを構築中です。これを基に連続帯から不連続・点在帯へと遷移する永久凍土環境に応じて、ピンゴやサーモカルストの形状がどのように変貌していくのかを解明していきます。

湧水の調査はウランバートル近郊や東側のヘンテイ地方にて実施しました(写真2)。私たち自身で湧水地点を訪れて状況を視認するほか、生業を湧水に依存する牧民からの情報(湧水の枯渇年や利用状況)も収集し、計170地点での現況(湧出中・枯渇)を確認しました。今後はこれを学習・検証データとした機械学習により、より広範で網羅的な湧水現況マップの作成や、湧水の枯渇や維持に関わる環境因子の解明を目指します。

また、8月にはダルハッド盆地やハンガイ山地北部で永久凍土環境を利用した地下貯蔵庫の状況も調査しました(写真3)。社会主義体制下で建設・運用されていた集落用大型地下貯蔵に置き換わる形で、複数の集落で家庭サイズの地下貯蔵庫が今でも生活基盤の一つとして使われていることを確認しました。現地では2010年代中盤に電力供給が始まったものの供給は現在も不安定です。土壌の温暖化や湿潤化と相まって、地下貯蔵庫の使用や維持は、必要とされながらも簡単ではありません。


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